業務に追われて忘れてしまう看護の本質
多くの看護師が患者の力になりたいという純粋な志を持ってこの道を選んでいる。しかし、実際の現場は理想の看護とは程遠い現実に直面することが多い。毎日の業務は点滴の準備や処置、膨大な書類作成、鳴り止まないナースコールへの対応によって分刻みのスケジュールで埋め尽くされている。本来であれば不安を抱える患者のそばに座り、ゆっくりと話を聞きたいところだが、現実は短い言葉を交わすのが精一杯ですぐに次の対応に行かなければならない。
圧倒的に人手が足りない現場では、いかに効率良く動くかが優先される。患者を一人の人間としてではなく、タスクの一つとして処理している自分に気づいたとき、激しい自己嫌悪に陥る人も多い。本当はもっと丁寧に清拭やケアをしたいのに、時間の不足がそれを許さない。こうした理想と現実のギャップは、仕事への情熱を少しずつ削り取っていく。どれだけ必死に動いても仕事が終わらず、バタバタと走り回っているうちに一日が終わる。そんな毎日に虚しさを感じ、自分の専門性に自信を持てなくなる人もいるだろう。
業務量を個人の努力だけで減らすのは不可能に近いが、今の不健全な状況を当たり前だと思い込まないことが大切だ。あまりに忙しすぎて、患者の安全さえ守れなくなっているとしたら、それは組織の構造的な問題と言える。一人の人間が背負いきれる仕事の量には限界がある。自分が理想とする看護が全くできない環境で、心身をすり減らし続けるのは辛いことだ。今の働き方で自分が本当に納得できるのか、一度立ち止まって考えてみることも必要だろう。